環境人材育成コンソーシアム設立記念シンポジウム


環境人材育成コンソーシアム設立記念シンポジウム 
~21世紀の持続可能なアジアに向けた産学官民連携による環境人材育成のために~

2011年3月7日の環境人材育成コンソーシアムの正式設立を記念して、2011年9月28日にシンポジウムを開催いたしました。 当日は非常に多くの皆様にご参加いただき、盛会裡に終了いたしました。 
シンポジウムでは、郡嶌孝氏(一般財団法人持続性推進機構理事長、同志社大学経済学部教授)と 安井至氏(EcoLeaD 代表幹事、独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長、国連大学名誉副学長、東京大学名誉教授)より基調講演をいただきました。その後、EcoLeaD が環境省と協働で開発した環境人材育成のための教育プログラムガイドライン等の紹介に続き、 21 世紀を担う環境人材の育成のあり方とEcoLeaDの役割について各界有識者にお話いただくラウンドテーブルを行いました。
※本シンポジウムは、2011年3月15日に予定されておりましたが、東日本大震災の影響により延期となっておりました。

日時
  • 2011年9月28日(水)13:30~17:30
会場
  • 東京ウィメンズプラザ ホール
    (東京都渋谷区神宮前)
主催
  • 環境省、
    環境人材育成コンソーシアム(EcoLeaD)
後援
  • 文部科学省、日本環境教育学会、
    財団法人地球環境戦略研究機関
協力
  • 一般財団法人持続性推進機構
参加者
  • 124名

  

プログラム

13:30~13:45 開催挨拶:白石 順一(環境省総合環境政策局局長) 
                    来賓挨拶:加藤 善一(文部科学省大臣官房審議官)

13:45~14:30 基調講演1「持続性を経済学から考える」icon

郡嶌 孝(一般財団法人持続性推進機構理事長、同志社大学経済学部教授)

14:30~15:15 基調講演2「環境人材の構造論・成長論」icon

安井 至(環境人材育成コンソーシアム代表幹事、独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長、国連大学名誉副学長、東京大学名誉教授)

15:15~15:35 環境人材育成コンソーシアム事業紹介「“T字型”環境人材育成のための大学・大学院向けプログラムガイドライン」icon

環境人材育成コンソーシアム事務局

15:35~15:50 休憩

15:50~17:25 ラウンドテーブル「21世紀を担う環境人材の産学官民連携による育成のあり方とEcoLeaDの役割について」

◆ ファシリテータ―:森下研(環境人材育成コンソーシアム事務局)
◆ スピーカー: 
《学識経験者》 廣野 良吉(成蹊大学名誉教授)
《学識経験者》 安井 至(環境人材育成コンソーシアム代表幹事) 
《民》 鵜野 公郎(LEADジャパン ナショナルプログラムディレクター) 
《民》 庄子 幹雄(特定非営利活動法人環境立国 理事長) 
《学》 井村 秀文(横浜市立大学特任教授) 
《学》 奥野 武俊(大阪府立大学理事長、学長) 
《学》 鬼頭 宏 (上智大学経済学部・大学院地球環境学研究科教授) 
《学》 中川 光弘(茨城大学農学部地域環境科学科教授) 
《学》 仁連 孝昭(滋賀県立大学副学長) 
《学》 樋口 一清(信州大学大学院経済・社会政策科学研究科教授) 
《産》 稲葉 延雄(株式会社リコー 取締役、専務執行役員) 
《産》 亀井 一行(アスクル株式会社 CSR・総務 統括部長) 
《産》 堤 惠美子(株式会社タケエイ 顧問) 
《産》 俣野 実 (大成建設株式会社 土木営業本部理事) 
《官》 河本 晃利(環境省総合環境政策局環境教育推進室室長代行) 
《官》 福井 俊英(文部科学省研究開発局環境エネルギー課環境科学技術推進官) 
《官》 森 壮一 (文部科学省 科学技術政策研究所 上席フェロー) 
《官》 山下 廣順(独立行政法人 科学技術振興機構(JST) プログラムオフィサー)

17:25~17:30 閉会挨拶:(環境人材育成コンソーシアム事務局)

ラウンドテーブル詳細

21 世紀を担う環境人材の育成のあり方とEcoLeaDの役割について、各界有識者にお話いただきました。(掲載はプログラム順)

廣野氏

廣野 良吉氏

日本 の大学教員は、一般的に大学以外の職場経験が少ないことが問題である。国際機関、国内外の政府、地方自治体、教育研究機関や企業、NGO等との連携を図り ながら環境教育を推進していく必要がある。日本の大学教員が研究のみならず教育活動を一層重視するためには、研究活動の評価の場合と同様に、その教育活動 を客観的に評価する基準を整備して、公正に評価すべきである。審議会等では教育政策のみならず、教育手法・体制の改善について一層突っ込んだ議論をすべき である。大学教育の改善・改革のためには、学長の強力なリーダーシップが不可欠である。日本の大学教育の優れた点、改善すべき点をしっかり吟味し、 EcoLeaDの活動を通じてアジアの大学生・大学院生たちに発信し、交流を深めてほしい。

 安井氏

安井 至氏

産業 界は、もはや本質的な経済学として、環境の課題に取り組むべきである。現状は、環境に特化すると企業として利益が得られないおそれがあるが、そこをどう妥 協するかが重要である。全体的な方針を決めつつ、多面的な取り扱いを行うといった曲芸的な経営を推進しなければならない。EcoLeaDも多面的な対応を しなければならないと実感した。
本日の皆様からのお言葉には大変勇気づけられた。自身も環境にコミットを始めて以来、なるべく広く、外部の領域を取り入れることを意識してきた。EcoLeaDとして、環境省と文部科学省の両省庁からの支援を引き続き得て、意義のある事業を進めていきたい。

鵜野氏

鵜野 公郎氏

筑波 大学の環境科学研究科の立ち上げを手伝った際、学問領域的に分断された大学組織に、横断的なテーマを持ち込むことがいかに難しいかを意識した。慶應義塾大 学の新キャンパス立ち上げでは、総合大学を環境と国際展開の2つを用いて変身させることに関与した。中部大学では、豊富なリソースをESDセンター、 GISセンターとして活用した。知識の物々交換は、互いにメリットがあり、積極的に行うべきだ。
大学には三つの問題がある。学問領域の問題、フィールドがキャンパス内に限られるという問題、学生が卒業後のキャリアに(学問を)活用できるかという問題 である。現在は大学側がリソースを投入しなければプログラム等が続かない仕組みになっている。大学の限界を超えないと、環境や持続可能性には届かない。 フィールドを重視し、アジアで活躍出来るリーダー育成、アジア各国の大学間のネットワーク形成を行うLEADやTEEN等の取組の成果を、EcoLeaD を通じて全大学の共有財産としていきたい。

庄子氏

庄子 幹雄氏

 自ら が主宰するNPO法人「環境立国」では、環境人材育成に関する三つの重要な点を意図している。自らの環境に関する思考を鍛え直すと同時に、他の方の思考を 理解することで、新しい発想や視点を獲得し、気づきを促す。真の環境リーダーシップの条件である多元的視点を形成し、人柄に支えられた環境リーダーの知を 培う。学界、政界、官界、経済界、NGOから次々と、環境に関して課せられている持続可能な社会を築くための数々のメッセージを、今のこの厳しい人間社会 と関連付け、明日へ向けての確かな示唆を持つ。
環境人材育成は、現在の日本に求められている最高の課題である。環境思考を深めていくため、EcoLeaDを活用してほしい。

井村氏

井村 秀文氏

アメ リカの大学院教育は、様々な社会経験のある、多様なバックグラウンドを持った学生らがグループワークでソリューションを創出するという点で非常にユニーク である。加えて同窓生のネットワーク形成が素晴らしい。日本の大学教育でも、企業や自治体からの講師派遣等の協力をいただき、産学官連携で取り組んでいく 工夫をしたい。
環境学は非常に多元的にならなくてはいけないが、視野が狭い傾向がある。真実をきちんと発信できる人材を育てなければならない。震災はショックではあった が、環境の面ではひとつの契機にもなる。EcoLeaDにおいてもエネルギー問題等にも視野を広げて取り組んでいただきたい。

奥野氏

奥野 武俊氏

EcoLeaD への協力を決めた時期に、海洋環境学を教えており、環境学をひとつの分野で教えることができないというジレンマがあった。そこで大学全体で環境学のプログ ラムを作ることに着手し、7学部横断的に副専攻を作った。フィールドワークでは、ベトナムのハロン湾における海の環境改善に取り組んでいる。アジアの国々 に対しては、決して「上から目線」ではなく、パートナーシップによって関係性を築いてほしい。
3.11を経て日本の学生の意識が変わってきた。学生のポテンシャルを信じて環境人材育成に取り組みたい。

鬼頭氏

鬼頭  宏氏

今後 の環境人材育成に必要なことは、大学の壁を崩すことである。大学内では学部学科間の壁をなくし、大学外では、地域との関係、国外との関係を築くことが重要 である。環境人材育成においては、岡山大学や岩手大学、立教大学等、ESD教育を先行されてきた方々の協力が大きかった。昨年HESD(※)フォーラムが スタートし、EcoLeaDに事務局を置いた。EcoLeaDは今後もこうした大学間の組織的な活動を支援してほしい。
(※HESD=高等教育機関における持続可能な開発のための教育。HESDフォーラムは、関係者が全国から集い、高等専門学校・短大・大学・大学院等における持続可能な教育の実践について成果を報告し、情報交換を通じてHESDの向上を図ることを目的として開催される)

中川氏

中川 光弘氏

茨城 大学では、大学院の副専攻プログラムとしてサステナビリティ学教育プログラム、学部の教養教育としてIR3Sへ加入しサステナビリティ学を実施するなどの 取組を行ってきた。環境人材育成には、環境配慮型の人材を教育することと、環境問題を解決できる環境のプロを育成することの2種類がある。実際に取り組ん でみたところ、環境人材育成を通じて、結果的に人間の基礎的教養が培われた。分野を環境に絞ったことで、学生が持っていた自然観、世界観が変わっていく。 大震災を経験して今までの世界観が日本中で揺らいでいる。環境人材育成の取組は、環境問題を解決するための目的でもあるが、もっと掘り下げていくと、教育 本来の目的である世界観や自然観、それらを通じて人格の変容に影響を与えるのではないかと考えており、環境人材育成を大事にしていきたい。

仁連氏

仁連 孝昭氏

滋賀 県立大学では中心的なシステムとしてフィールドワークを取り入れている。アジアに発展させていくことを目的にプログラムを作り、今年8月にはベトナム、バ ングラディッシュ、ラオス、滋賀の学生でフィールドワークとワークショップを行った。日本の学生は海外のフィールドに出れば決して内向きではなく、海外の 学生とも議論ができる。内向きだからといってあきらめるのではなく、進出支援を積極的にすべきである。学生には、未来を考えることがいかに大事かを意識し てほしい。学生は現在の日本経済の状況から判断して、国内に留まって暮らすことを望むが、未来を考えると、現状は維持できないことがわかる。若い学生こそ が、新しい構造や新しい発展の道を見出し、実践していくべきである。未来思考を持たせることが、環境人材育成の第一歩であると考えて取り組んでいる。

樋口氏

樋口 一清氏

10 年ほど大学に所属し、地域という視点から考えてきた。地域の企業やコミュニティをサステイナビリティの観点から見直す時期に来ており、そこに新しい道があ ると思う。EcoLeaDは先進的な取組であり、是非、大都市圏だけでなく、地域の産学官民の関係者もメンバーに取り込んでいってほしい。
信州地域で取り組んでいる、中小企業を軸にしたサステイナブルな地域発展のモデルは、アジア諸国の関係者とも共感し、協働できる部分が大きい。 EcoLeaDを仲立ちにして、アジア各地の現場で活躍する方々に信州での取り組みに関する情報が届くことを望んでいる。信州大学でもアジアからの留学生 を数多く受け入れており、人の面での交流は始まっている。具体的で実践的な課題はすでに目の前にある。EcoLeaDがそうした側面で課題解決をリードす ることを期待している。

稲葉氏

稲葉 延雄氏

株式 会社リコーは、複写機やプリンターなどの画像機器中心の製品やサービスを提供しているメーカーだが、環境問題については社是に近いほど強く意識して活動を 行ってきた。そうしたことからすると、今夏の国をあげた節電努力・エネルギー節約には非常に勇気づけられた。知り合いのドイツの経済学者も、震災後の日本 の対応だけでなく、市民の節電の取組みに感銘を受けたと言っている。家計も企業も工夫をし、生活や業務の質を落とさずに節電をできる工夫がなされた。
こうした取組みが成功した要素は2つあると考えている。企業も家計も、正しい情報をもとに適切に事態を認識し共有できたこと、節約をするための技術が入手 可能であったことである。EcoLeaDの役割は、環境問題に関する適切な情報の共有と必要な技術の育成支援等だと考えている。

亀井氏

亀井 一行氏

アス クル株式会社は間もなく20周年を迎えるオフィス向け通販の会社である。 商品の受注から配送までのサプライチェーンの効率化を目的とした社会最適のモデルとして事業をスタートさせたが、その流通基盤について環境面への配慮を行 なう「エコプラットフォーム」という考え方で仕入れから商品配達まで一貫して環境配慮を行う様に進化してきている。商品のお届けの際に使用した梱包材の回 収や再利用可能な配送材での配送も行っている。震災を経て、改めてサプライチェーン全体での環境面への配慮をどう構築するかが重要だと感じている。ビジネ スのあらゆる面で環境配慮は基本的な考え方として必要であり、EcoLeaDとも引き続き関わりを持っていきたい。

堤氏

堤 惠美子氏

タケ エイは環境産業を早い段階から目指し、建設現場での分別リサイクル、ゼロエミッション現場の実現等、日本初の事業を成功させてきたが、社会は進化してお り、次なる環境産業としての企業価値をいかに作っていくべきかを考えるようになった。企業は本業を通じて環境貢献をし、付加価値の高いサービス及び製品や 製造方法を創出するという壁にぶつかる。この壁を打ち破って環境貢献の仕事を進化させ、あらたに創造することが企業の運命であり、社会的役割と思う。
リサイクル技術等は仕事を通じて身につけられるが、環境以外の専門性では不足が出る。持続可能な社会を作るために多面性を理解し、それを克服する力を身に つけるのは大変なことである。中小零細企業は、自身の力だけでの育成には限界がある。EcoLeaDには、企業や大学の組織を必要に応じて活用できるよう な、本当の意味での環境人材育成のプラットフォームを築き上げていただきたい。

俣野氏

俣野  実氏

建設 会社でも環境対応が進んでいる。技術も進み、環境配慮が日常的になっている。経営者が環境を学ぶという項目があったが、経営者は環境というキーワードを部 分的に自分の考え方で捉えているケースが多い。環境というキーワードで世の中を変え、最終的には持続可能な社会を作って、アジアに対して日本が範を示すと いう、EcoLeaDの志の高い考え方に賛同している。今後も支援を続けていくので、ぜひ頑張ってほしい。

河本氏

河本 晃利氏

本日 はEcoLeaDに対する期待や希望、大学や企業等の取組等を伺って、非常に重要な示唆をいただいた。多面的な視点の重要性、地域やコミュニティの重要 性、未来を見据える点等、大事なキーワードをいただいた。環境省は2年間、準備会の時点からEcoLeaD事業の支援を行ってきた。今後の発展を切に期待 する。
環境を学ぶことが、社会観や自然観を通じた人格の変容に寄与するというご意見に共感した。EcoLeaDは、人材育成プログラムを運営するだけではなく、人格の形成も視野に入れて事業を進めるべきである。

福井氏

福井 俊英氏

東日本大震災の影響は非常に大きく、エネルギー問題がクローズアップされている。
アジア諸国から日本の大学に招いた留学生が、将来卒業して出身国に帰ったとき、政界、官界、学界で指導的な立場となって活躍してほしいと願っている。日本 とのつながりを利用して、日本との共同研究の推進や、日本の技術等を紹介していきたいと考えている。EcoLeaDには卒業生データベースの整備、産業界 等の各種機関との出会いの場の設定等、さまざまな事業に期待している。

森氏

森 壮一氏

環境教育と研究の両面で人文・社会科学と自然科学にまたがる連携・融合の実質化が問われている。今年度から科学技術政策研究所でも各大学の取り組みについて調査・分析を始めた。EcoLeaDのような場でも各大学共通の問題として議論いただきたい。

山下氏

山下 廣順氏

JST にて環境リーダープログラムの課題管理を行っている。このプログラムは、日本の大学であまり例がない、社会のリーダーたる学生をどう育成するかについての 方法を検討し、進めるプログラムである。文部科学省はリーディング大学院という構想を打ち出した。今後の日本の大学教育は、信念を持って組織を牽引できる リーダーシップを持った人材を育成するという視点で進んでいくと思われる。
コンソーシアムのメリットは、環境という視点を共有した人的交流組織である。T字型人材を育成するには、外部との交流が肝要である。この組織全体がまとまって動くために、EcoLeaDが人的交流を生かすことが重要である。